第一章 家なき娘

4/14
306人が本棚に入れています
本棚に追加
/257ページ
私は先輩を驚かせたくて半年前から嘘をついていた。 先輩と遠距離恋愛になってからメールのやり取りだけで交流を計って来た。 先輩の通う大学には合格圏内の判定が出ていたにも拘らず 【合格、微妙かも知れません】 【もしかしたらダメかも知れません】 なんて嘘をつき、先輩からは 【真優なら絶対大丈夫だ!】 【オレ、待っているんだからな、頑張れ!】 なんて励ましのメールをもらっていた。そして一番最大の嘘は【残念ながら不合格でした】という言葉。 本当は合格していたのに嘘をついた。 それは先輩を驚かせたくて、サプライズのつもりで半年がかりで画策して来たことだった。 そして私は全ての準備を整え先輩の暮らす街、そしてアパートを訪ねた。 部屋の扉をノックして開けられた先輩を見て意気揚々と告げた。 「先輩、本当は私、合格していたん───」 しかし言葉は最後まで発せられなかった。だって出て来た先輩のあられもない姿に絶句してしまったから。 上半身裸で下着一枚姿。そして部屋の奥から覗き込んでいた派手な女の人もまたあられもない姿だった。 その状況はふたりがただのお友だちという関係ではないことぐらい私にだって解ってしまったのだ。
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!