第一章 家なき娘

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(全ては私が嘘をついていたから……) 茫然としていた頭の中にジワジワと湧いて出て来る様々な現実。 私は先輩にフラれてしまった。今日から先輩と一緒に住めると思っていたのに。 甘えん坊の私が自立して自活することを喜んでくれた両親。だからこそ今更帰ることは出来なかった。 同棲するしか考えていなかったからひとりで住む処なんて探していなかった。 (………住む、処…?) 「そうだ、住む処っ」 先輩を怒らせ突然フラれてしまった私はようやくことの重大さに気が付いた。 そしていつまでも呆けてはいられないと思い、気持ちを奮い起こして神社から飛び出して行った。 「今日から……ですか?」 「はい」 人に訊きながら見つけて入った小さな不動産屋さんで部屋を探していた。 「希望家賃がこの金額で今日からすぐにといわれてもねぇ」 応対してくれた店主らしきおじさんは苦虫を潰したような顔をしていた。 (そりゃそうだよね。いきなり今日から住みたいだなんて) 非常識にもほどがあるというのは素人の私にも分かる。 (どうしよう……今日一晩ぐらいならホテルとかに泊まれる……かな) 見つからなければそういうことも考えなければいけない。 だけど私は貧乏学生。なるべく親に負担を掛けたくないと大学の費用以外はなんとか自分で賄おうと思っていた。
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