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「要はさ、原色だから綺麗とかないと思うんだよね。複数の色を使って味を出すのも絵を描く上では重要でしょ?青に白を加えたり、緑を加えたり、時には赤みたいな反対色を加えるのも僕は好きだけどね」
衝撃だった。
今までいろんな人に何度か説得されたけど、嫌なものは嫌だと反発してきた。
それなのに、なんだか彼の言葉は素直に受け止められる自分が居たのだ。
「そう。そうかもしれないわね・・・」
それから私は少しだけ態度を改めて、周りの人と交流を図ろうとは思ったものの、これまでまともに人付き合いをしてこなかった私には、ハードルが高すぎたようだ。
結局、その後も放課後は美術部で絵を描く毎日で、私のオーラは綺麗な青のまま。
「やっぱり私には原色の青が似合うと思うの」
口をとがらせ、独り言を言うように言い訳すると、
「意地張んなくていいよ。うまいこと行かなかったんでしょ?」
私をけしかけた張本人はどこ吹く風で、スケッチブックに筆を加える。
別に謝罪が欲しいわけではないが、なんだか悔しくてしばらく恨めしそうな視線を彼に送っていると、件の相手は降参とばかりに両の手のひらを挙げた。
「ふぅ。まだ始めたばかりだし焦る必要はないよ。それに、僕にはもう少しだけ変わったように見えるよ」
そう言って、スケッチブックを渡してきた。
訝しんだ視線を彼に向けたまま、私がスケッチブックの中を確認すると、そこには綺麗な青いオーラを纏った私の絵。
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