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彼女の名は須和田有紗。
俺らと同じ高校2年生である。
彼女の依頼内容は、失くし物を探して欲しいというものだった。
スマホで写真を見せてもらう。
だいぶ大事にしていた節があるな。
「母の形見なんです」
ペンケースについていたキーホルダーを眺めながら彼女がいう。
どうやらペンケースごと失くしたのだという。
「そんな大切な物を軽率に失くすだなんてこと、ありえねぇだろ」
隣で砂斗が告げる。
ま、そうだわな。
「失くし物くらい自分で探すのが普通なんじゃねぇの」
彼の言うことは最もだ。
最もなのだが……
言葉の本当の意図は彼女にきちんと伝わっているだろうか。
いかんせん口下手というか、不器用というか。
要は、彼女のことを考えてこんなことを言ったわけだが。
「……」
すっかり言葉を止めてしまった彼女。
ほら、伝わってない。
「自分で探したけど見つけられないから頼んでるのか、ハタから自分で探す気はないのか。どっち」
おい。
追い討ちをかけるな。
でも、良い誘導ではある。
彼女のキャッと結んだ口が息を吸い込むために開かれる。
「私……に、は、どうすることも……」
目には涙が浮かんでいた。
さぁ、真実を話して。
でないと、俺らは動かないよ。
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