心臓に杭を打つ

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心臓に杭を打つ

 説明会が終わり学園長と高津が去った教室では、銀零部隊の生徒達が新しく加わった仲間を歓迎しお互いに自己紹介をする声が行き交っていた。先輩達の目には学園長が入学式の挨拶で言ったように沸々と炎が燃えているようだった。  しかしその中に異様な雰囲気を放つ者がいる。長い黒髪が印象的な彼女は他の者達とは違いおどおどとした様子を見せる。そばかすの散る肌は病的に青白く、口元には不気味な笑みを浮かべていた。 「わ、私は加賀美(かがみ)こころ。私は新たに加わった仲間のあなた達に言いたい。き、吸血鬼は素晴らしい生き物よ!」  嬉々と語り出した加賀美の思ってもみない主張に新入生達は面食らう。 「か、彼らは神に最も近い存在なの。美しくて強くて残酷で……。皆もあの甘美な生き物を称えようと集まってくれたのね」  熱のこもった口調で前のめりに話す加賀美に、新入生達は困り果てる。煙たそうに呆れ顔をする二、三年生の内の誰かが「また始まった」と呟いたのが聞こえた。 「彼女、能力はすごく高いんだけどね。ちょっとおかしくなっちゃったんだ。吸血鬼と長く関わってるとたまにあぁ言うのが出る。銀零部隊除名も時間の問題だろうね」  先輩の内の一人が新入生達に耳打ちするのにも気付かず、加賀美は未だ口角を釣り上げた歪んだ笑みを浮かべていた。  自己紹介を終えた後、新入生達は射撃の訓練を受けることとなった。
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