心臓に杭を打つ

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「あなたはあなたの信じるものを大切にしてね」  濃い隈のある目を細めて言う加賀美に答えることも出来ず、赤星はただ黙ってその顔を見つめた。  一時間程の射撃場での訓練を終えその日は解散となった。赤星は複雑な思いを抱えつつも、今日の予定を終えたことに一息つく。鞄を取りに校舎へ戻ろうと校庭の隅を歩き始めたところで突然後ろから声がかかった。 「赤星雅巳、だな」  振り返ると見覚えのある男が立っていた。小学生時代のクラスメイト、来須(くるす)桃矢(とうや)だ。神経質に整えられた黒髪も、隙のない印象を受ける凛々しい目元も当時のままだった。 「来須も白銀学園に……と言うか銀零部隊に入ったのか」  彼も射撃場から出てきたらしい事に気付いた赤星が驚いた顔を見せると、対照的に来須は眼鏡の奥で涼しい笑みを浮かべる。 「いきなり三年の先輩に食って掛かったそうだな? お前も相変わらずみたいだな。――人殺しのくせに」  来須から鋭く発せられたその言葉に、赤星も目をつり上げる。二人の間にしばしの沈黙が流れた後、続けて来須が口を開いた。 「お前のような殺人者がなぜ銀零部隊に選ばれるのか……この身の程知らずが。期待して来たがこの学園の方針には理解しかねるな」  赤星は口を開こうとするも返す言葉が見つからなかった。
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