心臓に杭を打つ

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 赤星が、あぁ、と控えめに頷くと牡丹の顔から一瞬表情が消える。 「そっか……。さすが雅巳! 良かったじゃん」  すぐに笑みを浮かべた牡丹だったが、その声にいつもの覇気はない。赤星は、牡丹が自分を心配しているであろうことに気付かないふりをした。  二人の会話に構わず来須が嘲笑気味に吐き捨てる。 「小山内、お前もまだこんな奴とつるんでいたとは全く馬鹿な女だ」  来須の視線が牡丹に向いたことによって赤星は一気に顔色を変える。勢いよく来須の襟首を掴んだ赤星の手は震えるほどに力がこめられていた。赤星の敵意を露わにする視線を見下ろしながら、来須は一つ乾いた笑いを吐く。 「なんだ? 一端に怒ったか」 「牡丹の前でまでくだらないことを言うな」  その言葉を聞くや否や、来須は冷たい笑みを浮かべたまま赤星の左頬を思いっきり殴り飛ばした。 「雅巳……!」  牡丹の悲痛な叫び声も無視して赤星もまた来須目掛けて拳をふるう。二人が外聞もなくお互いを殴る音が何度も校庭に響いた。  部活動などで残っていた生徒達がだんだんと集まってくるも、それすら気にせず殴り合いを続ける二人を数名の男子生徒がなんとか取り押さえたのは、赤星が生傷だらけになった後だった。  保健室で養護教諭に叱られる二人は未だ目を合わさずお互いに苛立ちを露わにしている。
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