心臓に杭を打つ

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「ごめんなさい……!」 「あ……い、いえ……」  頭を下げてくる女子生徒の後ろでたむろしていた数名の男子生徒達がじろじろとした視線をこちらに寄こしていた。  よくよく自身の様子を確認して牡丹はようやく気付く。水に濡れたYシャツの下、生地の薄いキャミソールにまで水が染み込み下着が透けているのだ。  平謝りする女子生徒を宥める牡丹の元へ一人の人物が姿を現す。 「だ、大丈夫?」  躊躇いがちに声をかけてきたのは長い黒髪が印象的な女子生徒だった。 「だいじょうぶ……です……」  答えながら赤い顔をだんだんと俯かせていく牡丹の様子に、ロングヘアの女子生徒は辺りを見渡す。にやにやとした笑みを乗せた男子生徒達の視線に、状況を理解したらしい彼女は突然自身のYシャツの裾を迷いなく掴む。 「え……!?」  牡丹の目前にあるのはYシャツを自ら脱ぎ紫のブラジャー一枚となったロングヘアの女子生徒。彼女は驚いている牡丹の頭に自身の脱いだYシャツを被せ、戸惑う牡丹に構わずそれをきちんと着せた。 「ど、どうして……」  下着姿の女子生徒のすぐ横を先程の男子生徒達が通り過ぎていく。牡丹はびくっと体を強張らせるが、一方下着姿の彼女は堂々と背筋を伸ばし風になびく自身のロングヘアを耳にかけた。
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