心臓に杭を打つ

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 男子生徒達がこちらを指差しひそひそ話している様子が見える。彼らの笑い声が遠ざかった後で牡丹は震える声で言った。 「ご、ごめんなさい……。でもどうして……」  しどろもどろに話す牡丹に女子生徒は少し首を傾げ穏やかに微笑む。 「私は変わり者で通ってるから平気」  すらりと伸びる長い腕で自身の髪を整えながら何でもない事のように言う彼女を牡丹はただただ見つめた。その横から園芸部の女子生徒の気まずそうな声が上がる。 「あ、あの……私のせいで……えっと……」  我に返った牡丹はすぐにロングヘアの女子生徒の手を強引に掴んだ。 「と、とにかくこっちに……!」  ロングヘアの女子生徒の手を引いて速足で辿り着いたのは牡丹の自室だった。牡丹は事前に運び込まれた荷物の中を探るも、目的の衣服類はなかなか出てこない。いくつか段ボールをひっくり返したところでようやく見つけたTシャツを下着姿の彼女に着せた。 「本当にありがとう……! 私パニクっちゃって……」 「き、気にしなくていいのよ、本当に」  Tシャツ姿で笑う女子生徒を見ながら、牡丹も濡れた衣服を着替えた。 「私、小山内牡丹! あなたは?」 「わ、私は加賀美こころ」
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