とある変化

2/3
前へ
/28ページ
次へ
時刻を見ると、もう昼近い。大学の授業がない日だから助かったと、春馬は胸をなで下ろす。 ……結城とは二週間近く連絡がなかった。三日に一度は結城の家で飯を食べさせてもらったことを考えると、あり得ないほどに会わない日が続いていた。連絡を自分からとろうと思ったが、実はそんなことをほとんどしたことがないことに気がついた。  いつも結城が誘ってくれていたのだ。そう思うと、自分の受け身の姿勢が嫌になった。同時にこの間、マンションの前にいた結城の知り合いらしき男も気になった。あの時、結城の目が変わった。おびえが見え隠れしていた。  いったい、あの男は何なんだろう。気になってしょうがない、だけど、深く詮索してやぶ蛇になりたくない自分もいた。    揺れ動く心、その決心がついたのは母親の一言だった。 「最近、あなたのお友達を見ていないわね、病院で」 「え」  結城は予定が空きさえすれば、婚約者である真美の元へと訪れていた。それが自分の役割だと言わんばかりだった。そんな彼が、真美の元にすら行っていないなんて。ただ事じゃない、何かがあるはずだ。  春馬は拳を握った。    結果的なことを言おう。 春馬は結城の家に行った。そして接触に成功した。 チャイムを鳴らして、強く拳でドアを叩いて、春馬は結城を呼び出した。 結城は存外、それに従った。いや、正確に言えば頭がぼんやりとしすぎて、正確な判断が出来なかったのだろう。 いつものくせで出てしまったというのが正解だろう。  結城はそれくらいひどかった。 いつもきちんと整えられている髪は少し伸びている上に、うっすらとひげも伸びていた。 表情も薄暗く、顔色も悪い。青いを通り越して黒いくらいだ。  結城は春馬の顔を見た途端に驚いて、急いでドアを閉めようとした。しかしその瞬間を逃さずに、春馬は強引に部屋へと入り込む。  春馬は結城を見て、睨むように目を細める。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加