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「はる、ま、くん……」
「結城さん……どういうことだよ、なんでそんなやつれてんだよ」
春馬は結城の家に行く前に何度も連絡をいれていた。しかし、結城からの返信はなかった。
結城はなんとも言えない顔で、春馬から目をそらす。春馬は結城の襟首を掴んで、自分の方を向かせた。
「逃げるなよ、答えろ……!」
春馬の強い言葉。芯にせまるものがあったのだろう。結城は項垂れ、肩を落としながら、居間の方へと案内した。
その背中は、木枯らしがあたってしまったら、それだけで壊れてしまいそうな程に頼りなかった。
結城の部屋は汚くなっていた。ごみが散らかっているほどではないのが幸いだが、それでも換気がろくにされていなかったのだろう。空気が埃っぽくなっている。
結城は立ち止まり、それから弱々しい意思の瞳でこちらを見た。
「ごめんね、ひどい部屋で」
「別に良いよ、気にしない」
「ありがと……そう言ってくれると助かるよ」
結城はそれから、まるで不意を突くように言った。
「ああ、そうだ……僕ね、婚約破棄されたんだ」
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