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結城はどうしてと言葉を漏らした。
「……そうしてくれたら、俺は生きてて良かったと思う。食事をしてくれたら、俺はそれだけで嬉しい」
春馬の目から一筋、涙が流れた。熱い、涙だった。
「結城……俺はお前が好きなんだ。真美さんに赦しを求めて苦しんでいるのは分かっている。だけど、俺は」
春馬は祈るように耳元で囁いた。
「それで命を摩耗するように生きているのが、耐えられないんだ」
結城はその言葉に、うろたえ、おどおどとした表情を浮かべた。そしてぎゅっと目を瞑る。まるで、ボスに必死に立ち向かう冒険者のように。
「なんで、そんなことを言うんだ。なんで、こんな僕に……」
結城の目尻に涙が浮かぶ。そして、嗚咽が出た。
「今が終わってしまえば良かったのに……そんなことを言われたら」
結城はぼろぼろと泣き出した。堰を切ったように、その涙は痛みで出来ていた。
「僕は……!」
とっさに結城を春馬は抱きしめた。肉のない体があまりに頼りなくて、春馬はぎゅっと腕に力を込める。結城は一瞬身を固くしたが、すぐに感情が彼の体をゆるめた。まるで波の中、丸太にしがみつくように、結城は春馬にすがった。
「ああ……あぁあああっ」
結城は号哭した。
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