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春馬は食べながら、ちらりと結城を見る。二人は食事中あまり会話しない。
ただ集中して食べていく。
それにしても、丁寧に食べる男だと思う。
背筋もよく、箸でつまむ量も多すぎない。春馬のように口をがばりと大きく開けないし、静かに食べていく。
そして、ああ、今だ。生姜焼きに肉のうまさに感嘆して、少し目が見開く。そのきらきらした一瞬の目の輝きに春馬はうっとなる。心臓がきゅっと縮こまるようなわずかな痛み。これで春馬より八歳年上だ。アラサーなのだから、まだ二十歳の春馬が頭がくらくらしそうになる。
――ああ、好きって、面倒だ。
――こんなに苦しくてたまらないのに、 視線を送ることをやめられない。
――どれだけ結城さんがおかしい行動をしていると分かっていても。
――確かに文豪の小説の言うとおり、恋は罪悪なのかもしれない。
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