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一緒に、二人で出かけるのは初めてかもしれない。
春馬の緊張をよそに、明日はやって来た。
二人はほぼ同時刻に訪れ、すぐに大きなモールの服屋へと向かう。
夏の盛りだというのに、モールは人が少なかった。
「なんか歩きやすくてびっくりする」
それに結城は目を伏せて言った。
「ああ、今日は近くで大きな祭りと花火大会があるんだ」
「へぇ、よく知ってますね」
「うん……よく、行ってからね」
結城は曖昧に微笑んだ。
服屋では結城は白の服をよく選ぼうとしていた。
「白もいいけど、すぐにシミになるよ。少し色のついた方がいいんじゃない」
「そうなんだけどねぇ……ついつい白を見てしまって」
「この黒も、かっこいいと思うんだけどなぁ」
「黒はいいかな……」
結城は深く目をつむった。
「夜の暗さを思い出すから……あまり、真美に見せたくない」
「……」
怪訝そうに見た春馬に気づいたのだろう、結城は誤魔化すように言った。
「ああ、同じデザインの白があるじゃないか、こっちを買うよ」
「うん……」
レジに向かう結城。
置いてけぼりにされた子供のように、春馬は結城を見ていた。
そういえば、真美は夜、車にひかれたのだ。
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