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真面目な子のお話
僕はよく「真面目だね」と言われた。
真面目な自覚はあった。学生時代には勉強も部活も真面目に一生懸命やっていた。運動は僕には才能が無かったから、全国大会には行けなかった。
でも、勉強は頑張った分だけ結果として付いて来たから、僕は地元にあった全国的にも有名な難関大学に入学する事が出来た。その大学での四年間も僕は一生懸命頑張った。毎日頑張って頑張って頑張って頑張り続けて、僕は無事卒業出来た。就活も頑張って一流企業に入社した。
それからと言うもの、僕は学生時代以上に頑張って仕事をした。同期の奴が飲み会に行っている間にも、上司から半ば押し付けられるように渡された仕事も日を跨いだとしても頑張った。
「君は真面目だからね」「お前は優秀だから」そんな理由で僕は他人の尻拭いをさせられた。
それでも僕は誰かの為になるのなら、その微かな希望を抱いて一生懸命頑張り続けた。
ある日いつもの様に夜遅くまで仕事をしていると、一人の女性の声が聞こえてきた。
「大丈夫ですか?」
始めは僕の幻聴かと思っていた。でも、首筋に冷たいものが当たった時にそれは幻聴では無いと分かった。
「僕以外にまだ人がいたんですね」
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