正義の味方は此処にはいない。

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 ベティいわく。本来関わり合いを持つことがタブーであるはずの異世界を、全て手中に納めようとしている輩が現れたのだという。  大帝国にして、高い科学力と魔法文明に進化した世界――ディアレスト。  ディアレストは、本来世界が守るべきルールを、まるで守ろうとしない凶悪な国であったそうだ。彼らは異世界を自由に渡る“船”を持っていた。その船を使っては、次々と異世界を侵略し、人々を奴隷にして、資源の略奪を繰り返してきたのだという。僕らの世界が、今までディアレストに眼をつけられなかったのは本当に幸運なことだったのだそうだ。  しかし、そんなことを繰り返していて、世界が無事ですむはずがない。ディアレストという世界は徐々に歪みが広がり、世界そのものの崩壊の危機を迎えようとしていた。彼らは考えた。生き残るためにはどうすればいいか。そして、最悪の結論に至ったのだそうだ――他のまだ無事な世界を乗っ取ってしまえばいい、と。  ディアレストという世界は強大で、住む人間たち数も膨大だった。そして、彼らは極めて協調性というものがなかった。自分達が一番でなければ気が済まない彼らは、平和に他の世界に移り住んで、下等なその世界の住人たちと共存するなどということは全く考えられなかったのである。  彼らは全ての世界を侵略し、自分達以外の全ての住人たちを根絶やしにしようとしていた。ディアレストほどの力をもった世界は全ての異世界を探してもどこにもない。このままでは、世界の全てがディアレスト人たちに滅ぼされ、当然僕達もみんな殺されてしまうだろうとベティは告げたのである。 『殺されたくないのなら、お前たちは選ぶしかない。この世界の代表を。この世界を救う、“勇者”になるべき存在を』
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