正義の味方は此処にはいない。

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 ***  僕は、知らなかった。  何も、知らなかったのだ。  何故、放浪の旅人でしかないベティが、危険をおかしてまで凶悪な帝国の連中に交渉を行ったのか。この剣闘会が、一体どんな意味を持っていたか、など。  僕は仲間達と共に、満身創痍になりながらも大会を勝ち上がっていった。  決勝戦。絶対に勝ち目がないと思われた、ディアレストの勇者達を相手に――死闘の末、僕たちは勝利を決めることになる。相手は僕とさほど変わらない年の少年達だった。傲慢で、自分勝手と思われていた帝国の勇者達だったが――剣を交えてみれば彼らもただ世界を守ることに必死で、守りたい家族がいただけだと知ることになるのである。  死闘が終わり、僕らは固く握手を交わした。 『負けたよ。ディアレスト以外の連中なんて大したことないと思ってたのに…お前みたいなすごいやつがいると知れて、本当に良かった』 『こちらこそ。…ディアレストが滅ばないで済む方法を、僕も考えてみるよ。優勝者は、全てを自由にできるんだ。なら、みんなで平和的に生き残るやり方もきっとあるはずなんだ。一緒に探そう。僕たちは、もう友達なんだから』  しかし、ここで風雲急を告げる展開が待ち受けていた。  ずっと中立のふりをして大会を運営していた魔女――ベティが、自分達に牙を剥いてきたのである。 『そんな生温いエンディングなど許さんぞ。何故なら…本当の決勝戦は、これから始まるのだから。お前たちのおかげで、私の究極の魔法はもうじき完成しようとしている。これでもう、誰も私を止めることはできない…!』
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