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だが、これは男の推測でしかない。
実際松島が何を占いの選択肢にして、どちらを選んだのかは、男には知るよしもない。
あるのは男は占い、松島が選んだという事実だけ。
「占いなんて、所詮意味のないことでしょ」
男は少し悲しげに呟いた。
里美ママは、窓の方を見つめている男に向かって言う。
「あなた都合で構わないから、いつかもう一本も飲ませてね。私待つのは得意だから」
男は里美ママに顔を戻す。
そこには優しく微笑む顔があった。
男は静かに答える。
「ええ。いつか必ず」
静けさが漂う店内を、窓から入る真夜中の優しい風に乗って、甘くせつない香りが満たしていた。
終
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