真夜中の本音

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 布団の中でスマホをいじる。ブルーライトのせいで気配の欠けらもない眠気がさらに遠のくことを知りながら。今日は達哉のデートの日だった。そういうLINEが今朝きた。今日こそ童貞を捨ててくるぜと勇ましく意気込んでいた。風人はいってらっしゃいと返信した。風人としてはそれでやり取りは終わると思っていたのだが、どの服を着ていけばいいのかと姿見の前で顔から下を写した写真が次々と送られてきて閉口した。  風人は恋愛アドバイザーではない。もちろんである。そもそも風人だって達哉と同じく恋がかなったことがない。なのに何故か達哉は恋愛に関して風人に絶対の信頼をおいている。何故、と尋ねると「どこにいても女の子が近寄ってくるじゃないか」なんて羨ましそうに言われた。風人と達哉は小学校からの幼なじみだ。中高も一緒で、今は同じ大学に通っている。中学生の頃から、達哉は「彼女が欲しい」と言うようになった。そんなことを考えたこともなかった風人は驚いたが、達哉はそればかり考えているようだった。  友達と仲良くすごしていても部活や勉強に打ち込んでいても、彼女が欲しいという思いは常にあって、彼女という存在がない今はどうしても満ち足りないというようなことをよく言っていた。 テストの点が良くてもテニス部でレギュラーに選ばれても、ちょっと喜んだ後「でも彼女いないし」 と卑屈な気持ちが湧くのだという。風人は何度かそういう話を聞かされたが、その度に「自分とは反対だな」と感じた。  風人は家や学校で嫌なことがあって 落ち込んでいても、「達哉と遊ぶからいいか」とすぐに立ち直る。
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