真夜中の本音

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 そんなわけだから、風人には達哉の気持ちがわからない。今日のデートに賭ける気持ちが。  達哉のデートの相手は、友達の彼女の友達だという。3回目のデートだ。感触は悪くないらしい。それはめでたいと思う。彼女を作るのが達哉の長年の悲願であったから。風人はスマホで時間を確認する。深夜1時。うまくいったんだろう。うまくいかなければ泣きつくような電話かLINEが来るはずだから。風人は小さく息を吐いて、スマホを枕元に置いた。寝よう。  布団に潜り込む。と、同時にスマホが鳴り出した。横になったままスマホを手に取る。達哉だった。数分後、風人は大急ぎで部屋を出たのだった。  誰もいない道で、風人はひとり自転車を漕ぐ。12月の風は刺すように冷たく吐き出した息は白く流れていく。  達哉の電話の内容は、終電を逃した上に女の子に振られたというものだった。歩いて帰れる距離だ。だけどもう一歩も歩けないなんて達哉が哀れっぽい声を出すから。風人は迎えに行くよと告げたのだ。  降ってくる月明かりは煌々とあたりを照らしだしていてありがたい。今夜は満月だった。  待ってるように指示した駅の近くのコンビニに、達哉はちゃんといた。歩けないなどと言うから、いなかったらどうしようかと思った。雑誌を立ち読みしていた――おそらくフリだろうけど――達哉の目も鼻も耳も頬も真っ赤で、風人は気の毒に思った。 
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