1.

5/5
435人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
『ええっと。今はこの大会に賭けて練習してきて、それが終わったところなので、先のことは全然』 『そうですか。では最後に一言下さい』 『はい。みんな、観てたー!? 俺、やったよ!』 それだけはとびきりの笑顔で、両手の手のひらをテレビに向けて思い切り振っていた、そこにはまだ17歳の子供らしさが見える。 そんな姿を見て、蓮は微笑む。 その笑みは紗江子からは見えない。 ようやく放送が終わり、蓮はテレビを消して立ち上がった。 「さて、じゃあ支度するよ」 「早くね、売り切れちゃうわ」 蓮は笑顔で返事をして、書斎に入り、机にあったスマホを取った。 アドレス帳から『田浦佑葵』の名前をタップして、メッセージを打ち込む。 『佑葵、優勝&ハットトリック、おめでとう。約束通りプレゼント贈るよ、楽しみにしてて』 それを送信すると、コートを手にする。 全国大会に進んだ時からの約束だった、新しいスパイクが欲しいと言っていた。 今日買えるだろうか、自分の物だと言い訳して。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!