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『ええっと。今はこの大会に賭けて練習してきて、それが終わったところなので、先のことは全然』
『そうですか。では最後に一言下さい』
『はい。みんな、観てたー!? 俺、やったよ!』
それだけはとびきりの笑顔で、両手の手のひらをテレビに向けて思い切り振っていた、そこにはまだ17歳の子供らしさが見える。
そんな姿を見て、蓮は微笑む。
その笑みは紗江子からは見えない。
ようやく放送が終わり、蓮はテレビを消して立ち上がった。
「さて、じゃあ支度するよ」
「早くね、売り切れちゃうわ」
蓮は笑顔で返事をして、書斎に入り、机にあったスマホを取った。
アドレス帳から『田浦佑葵』の名前をタップして、メッセージを打ち込む。
『佑葵、優勝&ハットトリック、おめでとう。約束通りプレゼント贈るよ、楽しみにしてて』
それを送信すると、コートを手にする。
全国大会に進んだ時からの約束だった、新しいスパイクが欲しいと言っていた。
今日買えるだろうか、自分の物だと言い訳して。
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