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文化祭は、あっという間に終わってしまった。お化け屋敷は素人とは思えない出来で腰を抜かしそうだったし、3年1組のメイド喫茶も、衣装といい、紅茶といい、本格的ですごかった。男子もメイド服を着ていたのには思わず紅茶を吹き出しそうになってしまったけれど、男性のメイドは話題となり、最後に行う人気投票でも一位だったそうだ。私達のクラスも、まずまずの客入りだった。 後夜祭で定番のキャンプファイアーをした後は、クラスで打ち上げだ。私は普段そこまでクラスの中心にいるタイプではないが、実行委員をしていることもあり、随分多くの人と話した。多分、文化祭の準備で初めて話した人も多いと思う。 しかし、 「坂下さん、真面目そうに見えるけど意外と天然だし、面白いよね。」 「うん、うん」 と言われるのは納得がいかない。首を傾げていると、それでいいよ、という顔をされる。なんだか皆の表情に母性や父性を感じる。よく分からないが、好意的に受け止められているようだから良しとしよう。 こうしてそれなりに楽しんでいた私だが、ふと、高橋君がいないことに気付く。そのことを言うと、隣で話していた子が、呼び出されたよ、と耳打ちしてくれる。 なるほど、よく見たら、斎藤さんもいない。黒髪ロング、清楚でスタイル抜群という典型的な美少女だ。そういえばサッカー部のマネージャーだったかもしれない。 私以外はもう気づいていたと見えて、先ほどから、なんとなく、話しながらもチラチラと皆、ドアの方に目をやっているのだった。 解散の時間になっても、2人は帰ってこなかった。クラス中、そのまま上手くいって2人で過ごしてるだの、いやいや、振った気まずさ、振られた気まずさからお互い帰れなかったのではないかなど暫く騒いでいたが、帰ってくる気配もないため、徐々に皆帰っていった。
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