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文化祭。
一部の勉強好きな生徒は不服そうだけれど、大半の生徒にとっては特別な日。
特に私の高校のような共学ではなおさら。
今日こそ告白を、と企む男女に溢れ、校内が浮き足立つ日。
準備期間の今も、当日に向けて段々とクラスの熱が上がっていくのがわかる。
誰と誰がいい感じだ、とか、あいつがあの子にとうとう告白することを決めた、とか。
噂話をする前に手を動かして欲しい、と、文化祭実行委員の私は思うのだった。
隣で同じ委員の高橋君がため息をついた。
「そろそろ注意するか?」
「いや、注意してもあれは無理でしょう…」
どうやら同じことを思っていたらしい。
だよなあ、と、彼は再度嘆息した。
楽しい気分に水を差したくないが、このままだと、当日までにどうやっても作業が終わりそうもない。
チラリと高橋君の方に視線を向けると、彼は仕方がなさそうにへにゃりと笑い、両手を二度叩いた。
「はいはい、お前ら。作業遅れてんだから手動かせ。」
「高橋、センコーみたい」
どっと場が沸く。
「前日までに終わらなかったら、文化祭両日、自由時間なしになるみたいだぞ。」
途端、それは困る!と皆が必死に手を動かしはじめた。実際は嘘なのだが、ありえそうな嘘。嘘も方便だ。
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