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そうしているうちに、文化祭もいよいよ明日となった。実行委員の私と高橋君は、残って最終チェックだ。一時は、果たして終わるのだろうかとひやひやしたが、なんとか間に合った。こうして並べてみると、意外と立派なものに仕上がっていた。やる気のなかったクラスメイト達も、完成が見えてくるにしたがって愛着がわいたのであろう、終わったときはみんなで歓声を上げた。まるで今日が文化祭の最終日のような盛り上がりようだった。 様子を見に来た担任の山口先生も、「おお、立派なものだなあ。よくやったなあ」と若干涙目。日本史教諭である山口先生は、特に伊達政宗の兜のレプリカを見て感激していた。持って帰って良い?と言われた時には、クラス中が笑った。 こんなにでかいのを持っていてどうするんだろうと思いはしたが、喜んでくれたのであれば嬉しい。主に私がペタペタと金紙を貼ったのはその兜だ。 実際、展示するだけで、受付以外に特に当日やることもない。完成した今日が、達成感のピークだろう。 柄にもなく、じーんとしていた私だが、ふと周りを見渡してみれば、皆はひとしきり完成の嬉しさと解放感に浸ると、もう明日の予定のことで頭がいっぱいのよう。解散の声がかかると、足早に帰路についていった。 なんだか少し寂しくていじけていると、ポンと頭に衝撃が。 何だろうと振り向くと、高橋君が缶ジュースを片手に持っていた。 「おつかれ」 ありがとう、と礼を言い、遠慮なくいただく。キンと冷えた微炭酸のそれは、疲れた身体に染み渡るようだった。 「私の好きなジュース、よく覚えてたね」 炭酸は好まない私だが、このレモン味のジュースだけは、たまに無性に飲みたくなるのだ。 「そりゃ、長い付き合いですから。」 と、彼は戯けたように言った。 「ありがと、こーちゃん。」 私もニヤリと笑ってお礼を言う。 目をまん丸にして、まさに鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした高橋君の顔が面白くて、私は笑いを堪えるのに必死だった。 「いきなりびっくりするだろ…」 と、短髪の頭を左手でガシガシとかきながら、顔をちょっと赤らめ、頬を膨らませて睨んでくる顔がなんとも幼くて、私は再び笑ってしまった。 「いいから、最終チェックして帰るぞ。」 彼はそう言うと、不備がないか、取れかけているところはないか、教室をチェックし始めた。
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