真夜中

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 手に入れた品は売りさばかなければ、ただの荷物でしかない。幾つか顔なじみの交換場所がある。中でも仲間にも喜ばれ、ギムリも好んで行くのは、バルモア国の南部だった。  バルモアは大きな国で、工業の発達した北部と農作地帯の南部に分かれている。軍事に勤しむ北部のせいで、平穏な南部の近海も警戒が強い。巡視船の合間を掻い潜る航路をギムリは知っている。  満潮の夜。灯台の明かりを利用して、それでも相手には見つからないように、慎重に慎重を重ねて船を進める。船を岬の岩陰に隠し終えれば、一安心だ。    万が一見つかっても、命を奪われるのなら仕方がない。相手の力が勝っていたのだからと諦めが付く。しかし捕まるのは別だ。狭くて薄暗い牢に入れられた所を想像するだけで、気が狂いそうになる。そして何より、もう二度と海上には出られない。これ以上の苦しみが他にあるだろうか……?  そんなことを思いながら、ギムリは陸に上がるのだった。
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