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「ベルハじゃねぇか! てめえ、どういうことだ」
旧知の仲でもあるベルハは、海賊業に長く携わっている。船の規模も抱えている仲間の数もギムリと同じくらいで、普段は挨拶の一つ二つを交わして過ぎ去っていくことが多かった。
そのベルハが笑いながら答える。
「オレももう、年だしな。そろそろ引退を考えていてなあ。まとまった金が欲しいと思っていたところに、お前さんの船が見えたもんだからさ。まあ、悪く思わんでくれ」
「ふざけんな! とっくに頭にきてるってんだ! それに、こっちも獲物待ちだ、金なんかねえ!」
「お前さん、知らねえのか? 自分の首にかかっている懸賞金の額を。ロートランドあたりの温暖な国で、老後を送るには十分の額さ」
「懸賞金だと……」
ギムリが面食らっている間にも、船に渡し板が掛けられ、ベルハの子分たちが縁に姿を見せる。インバース号内も騒動を聞きつけて、ギムリの周りに仲間が集まって来た。
頭の面子というものがある。仲間の前で「はい、そうですか」というわけにはいかない。
「てめえ、いい加減なこと言ってんじゃねえぞ!」
「あはは、お前さん、この前いつ陸に上がった? 酒場じゃ、賞金首ギムリがどこにいるかが酒の肴よ。ちなみに賞金の支払いはバルモア国だ。思い当たることがあるんじゃねえの」
「くそ、そういうことか」
ようやく納得のいく答えが得られたが、そう簡単に首を差し出すつもりはない。しかし、ベルハ側では全員が銃をこちらに向けて構えている。
「おい、常勝で名を馳せたベルハが、オレらを銃殺か? いくら老いぼれたからって、卑怯だろ!」
「そうだよなあ。お前さんとは知らない間柄じゃねえし、こっちも銃をぶっ放して『はい、さいなら』ってのは気が引けるんだよ。素直に投降するってのはどうだ?」
「このギムリ様が投降だと? 冗談は休み休み言え! 男らしく勝負しろ!」
ギムリが拳を掲げた。背後で仲間たちが「そうだ、そうだ」と煽りの声を上げている。ベルハの隣に大きな体躯の若者が並んだ。
「親父、オレにやらせてくれ。卑怯者よばわりされて、黙っていられるか」
「そうだな、お前がやるってんなら、止める理由はねえよ」
ベルハは頷き、ギムリに向けて再び声を上げた。
「息子のボンガと一対一の勝負だ。これ以上は譲れねえ」
「おお、その勝負、受けて立つ!」
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