真夜中

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真夜中

 月は雲に隠れ、海上には霧が立ち込めている。風は弱く、航行中の帆船にとっては有難くない夜。しかし、海賊にとっては絶好の狩り日和である。  その商船の船尾に立つ見張り役は、忍び寄る人影に全く気付かなかった。背後から頭を殴られ、相手の顔すら見ることなく床の上に伏す。その時、船首でも同じことが繰り広げられていた。 「見張りは潰した。残りの奴らを呼べ」  見張りを制圧すると、海賊の頭であるギムリは仲間の一人にそう命令をする。恰幅のいい身体つきに似合わず、動きは機敏で判断も早い。  横付けした小舟から、縄梯子を伝って短剣や斧を持った男たちが次々と商船に乗り込んだ。甲板に響く足音に気付いて、船内から船員が飛び出してくる。が、今頃来たってもう遅い。ギムリがそいつらの喉元に刃を突きつけ、低い声で脅す。 「命が惜しかったら、積荷を全部差し出せ」 「うっ……お前ら、何者だ」 「オレたちは海賊、その名もインバースだ!」
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