4/5
前へ
/5ページ
次へ
母は入院し、首を絞めた父は警察に入れられた。 母は1週間程で退院をした。 父はまだ警察にいた。 弟を祖父母に預け、母と一緒に父の面会に行った。 アクリル板の向こうにいる父はとても元気だった。 私が最後に見た、項垂れて動かなかった父とは別人のようだった。 どれぐらいの期間だったのだろう。記憶が曖昧だが、母が被害届を取り下げたのか父が警察から出てきた。 世間体を気にしたのか、事件のあった部屋を引き払い別の部屋で親子4人の暮らしが再開した。 なぜ父が母の首を絞めたのか、私は知っていた。 母が同窓会に行き、そのまま朝帰りをした。 その時の浮気相手は部活が一緒だった同級生。 誰に教えられるでもなく3才の私はそれをすべて感じていた。 朝になっても戻らぬ母を迎えにバス停まで何度も足を運んだ。 昼を過ぎた頃、母がバスから降りてきた。 母に父がとても怒っていることを伝え、 伝えたことで安心し油断から母をひとりで部屋へ向かわせてしまった。 階段を登る母の後ろ姿をいまでも覚えている。 三輪車で遊んでいた時、弟の泣き声と父の怒鳴り声が聞こえた。 その時わたしは自分の失敗に気づいた。 一緒に部屋に入るべきだった。 急いで階段を登り部屋に入ると紫色の母の顔から泡のようなものが垂れていた。 私のせいだ。 私のせいで母が死んでしまった。 随分と自分を責めたものだが、4人の暮らしに戻ってからもそれは変わらなかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加