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三月の終わりになっていた。
水音がする。
目を瞑っているからだろうか。それは大きな音に聞こえる。耳のすぐ側で、いや頭の中で鳴っているような。
水音に包まれている感じ。
……なんだかちょっとカッコつけてしまった。恥ずかしい。
水音は軽い金属が触れあうような音だった。鈴の音色に似ているように思えるし、もっとカチャカチャした感じにも思える。川の流れる音とはなんだか違う。もしかしたらここの水が澄んだわき水だからなのかもしれない。清水の流れる音なんて、たぶん初めて聴く。
ユキちゃんもこの音を聴いていたのかな。こうやって目を閉じて立っていたら聴こえたのかな。音に包まれていたのかな。
バカなことを考えていると思う。ユキちゃんはフィクションの中の登場人物だ。SF小説の中の重要なキャラクターだ。だから小説の中に書かれてあることだけが全てなのだ。書かれてあることだけがそのキャラクターのリアルのはずだ
毎回そう自分の頭に言い聞かせているんだけど、心は毎回、ユキちゃんもここでこうしていたに違いないと感じてしまう。
やれやれだ。誰かさんと同じようにぼやいてみる。
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