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 さっきまではあまり水音なんて気にならなかった。当たり前なのかもしれない。ここでは水音がするのが必然なのだ。初めて来た時から水音のあることはわかっていた。どうしてこの水音が発生しているのかも見つけている。でもそれはただそれだけのことのように思っていた。水音はただ水が流れる時に立つ音であるにすぎないはずだし、域外の水路へと流れ落ちていく場所がこの近くだから、それがあるのは当然なのだ。この場所の付属品なのだ。  でも今は違う。こんなにも水音が心に響く。 …………こうやって水音が大きく意識にあらわれてきたというのは、そろそろ目を開ける時間だと知らせてくれているのかもしれない。キセキの確認はもう終わったのだと知らせてくれているのかもしれない。  その瞬間、一つ波紋のような大きな水音が広がった。それが急き立てる合図のように思えたから目を開けることにした。  でもなんだか目を開けるのに躊躇した。少し怖い感じがする。開けた目の前がさっきとは違う場所だったらどうしよう。  よく訳の分からないキセキが起きてしまった後なんだから、もしかしたらそれは非日常の扉が開いたということではないのか。  非日常といったら違う世界、異世界だろう。  もしかしたら目を瞑っている間に何処かに飛ばされたということがあるかもしれない。何処か遠くへ、いや現実ではない何処かへ。  この現実から解き放たれて、何処かの異世界へ能力者として召還されてしまう話はいっぱい読んできた。もしかしたら今度は自分が……。キセキを受けた身ならば当然……。  でもないか……。     
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