第4夜

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 明け方の雷雨に眠りを妨げられた僕は、そのまま二度寝して昼前に目覚めた。まるで雷雨など嘘だったかのように、真昼の空には真っ白な入道雲がしれっとまぶしく輝いていた。  僕は自部屋の網戸越しに覗く夏空からそっと目をそむけると、閉じたまま机の上に置かれたスケッチブックを見てため息を一つついた。遠くのほうから蝉の鳴く声が聞こえてくるが、夏休みが始まった頃と比べるとその量は少し減ったようにも思える。  会えるのは今夜が最後、とサキは言っていた。  3日間僕の前に姿を現し続けた不思議な少女、サキ。現れた初日、彼女が「今日から4日間」と言っていたことを僕は今更ながら思い出した。  4日間。それが何の期間を意味するのかを僕なりに真剣に考察した結果、このお盆の4日間を指しているのではないかという考えに至った。  今日は送り盆だ。──地域によっては昨日行うところもあるが、お盆の間だけこの世に帰って来ていた死者の魂があの世へと戻ってゆく日。  サキが何者なのかはまだわからない。でもサキと会えるのが今日で最後かもしれないというのはお盆と関係があるからなのではないかという気が漠然としていた。  こんな漠然とした予感など思いっきり外れてしまえばよいのだが、悪い予感は得てして的中しがちなのだ、少なくとも僕の場合は。
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