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夕食を終えた僕は自室へと戻った。
机の上のスケッチブックを開き、ペンを手に取る。今描いているのは、秋の文化祭での展示に向けて企画中の新しいオリジナルキャラクターだ。
眉付近でまっすぐ切りそろえた前髪に胸元までのストレートロングの、ぱっちりとした藍色の瞳の少女。肌は不健康に見えないレベルで最大限色白。髪色は頭頂部が空色で、毛先に向かってミントグリーンになるようなグラデーション。衣装は白色の二尺袖に膝上までぐっと短くした濃藍の袴風スカート、足元はスカートと同色のニーハイブーツ。
全体的には近未来のサイバー系ヒロインをイメージしつつ、そこに和の要素を取り入れたデザインだ。
「過去と現代と未来をつなぐヒロイン、なんてコンセプトだけど…… どうかなぁ、ありきたりかなぁ」
デザインのおおよその方向性は定まりつつあるけど、まだ細部の詰めが全然できていない。何度も消しゴムを使いながら作業に没頭し始めた僕は、ふとスケッチブックの用紙が手汗で微妙に歪んでいることに気付く。
扇風機は回しているが室温は30度近くあり、今夜も熱帯夜となることは明らかだった。
「夜になっても全っ然涼しくならないな……。飲み物、持ってくるか」
僕はペンを置き、階段を降りて再び台所へと向かった。
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