怖がってみた。【一縷】

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命にも代え難い、宝物がいる。 俺のベッドで、俺の胸に頬を付けて横たわる葵の…おでこに口付ける。 「…何?」 少しずつ、葵も俺に心を許してくれるようになった、と思う。キスを許してくれるまでが…とにかく長く感じた。もうこの人は俺を受け入れてくれないんじゃないかと、思ったほどだ。 今年に入って最近は、喜ばしいほど俺を求めてくれて、……かえって心配になる。 「雷…鳴ってるね」 「怖い?」 一糸纏わない葵の体を、抱き寄せる。 この体温も、好きだ。 俺に馴染んで、溶け込んで、一つになれればといつも思う。そうしたら、誰も俺らを引き離せない。 「ううん、…佐伯さんがいるから」 葵からは、いつも触れるだけのキス。 もっと俺を、求めてくれればいいのにと、思うけど。……それは、求め過ぎてる。 葵とこうして、そばにいられるだけでも…… 俺にとっては、幸せだった。 「俺は昔…怖かったよ?雷…。いつも布団に潜ってた」 葵が楽しそうに笑った。 「えー?本当?…ちょっと、可愛い…」 俺も、当てるだけのキスをした。 「そうだよ…?一縷少年は、怖がりで、臆病で。けどそれを周りに悟られまいと生きてた……今も、変わらないけど」     
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