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周囲の目は痛いほど浴びていた。浴びている、今も。けど俺は三男だから、末っ子だから。まだその熱は、薄らいでいたと思う。
けど分かっていた、大人の目。考え。
〝将来のSAEKIを継ぐのは?〟
俺じゃないのは分かっているけど、周りにそう思われてる空気を感じるもの、辛かった。
「…それは、大変だったねぇ…?…ボク」
小さい子をあやす様に、葵が俺の頭を撫でた。
「偉い、偉い…」
決してふざけているようではなく、本当に、
俺を思って言ってくれているのが分かる。
葵の瞳が…潤んで、水晶玉の様だった。
「俺でいいなら、何でもしてあげるよ…?佐伯さんが…元気になれること」
今日はもう散々した口付けを、それでも何度もするのは……葵を、離したくないから。
「じゃあ…呼んで…〝一縷〟って」
他の誰でもない、葵が、俺だけに向いてくれるように。
「俺を葵のものにして、いいよ…」
虚しいだけかもしれないけど、意思表示をする。
細い腰に腕を回して…子供のよう、
お気に入りのおもちゃを手元に置きたがって。
「……いち、る……」
腕の中の人が、小さく囁く。
「…こんなんで、…元気に、なる?…」
唇を重ねた後、下唇を一周…舐めて。
甘えたような目で俺を見ている。
…慰めようと、してくれているのか。
今日の葵は特別、可愛かった。
「あぁ、なるよ…ありがとう」
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