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目の前の人を見ないまま、頷いた。
見えなくても、あの人じゃないことは分かってるけど、
せめて痛みを、緩和したかった。
こうやって、少しずつ…この人に、慣れていく。
いつか、俺からあの人が、消えてなくなるように。
『今度のクリスマス、俺の部屋で過ごしてくれたら嬉しい』
最後通牒みたいに聞こえた。
部屋のドアを閉めた時、肩に入っていた力がふっと抜けて…それに寄りかかる。ガシャンという音がして、
この部屋で、この玄関で、
あの人に強引にされたキスを思い出した。
(思い出しちゃ…いけないのに)
もう戻れないんだから。
俺が勝手に課した罰に、苛まれる。
あぁ、罰じゃない。これは、
〝ヒロを愛する〟ということだ。
いつか、どこかにいるヒロを想いながら、
死ぬ為の、綺麗なお伽話。
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