お願いしてみた。【歩】

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「それこそ、付き合えなかったってことでしょ?」 「まぁ…そうなんだけど」 「僕とは付き合えます?」 「……」 反応のないその人の手を掴んで、 「…好きに使って下さい…僕を、廣田さんの、したいように」 「したいは…したいんだけど」 僕は尻尾を振る子犬のように、 「じゃあ、して?すぐして?市役所で僕にしてること、もっと、それ以上のことーー」 何回も触ってくれた。キスもしてくれた。 けど僕は、そんなんじゃ、足りない……もっとして欲しいんだ。僕に、廣田さんを入れて欲しいんだ。 僕は、廣田さんだけのモノになりたい…… 「あの…言いにくいんだけど」 「はい、何です?」 「他に、女の子もいる…んだけど」 「何人?」 「まだ…一人…」 〝まだ〟って何よ〝まだ〟ってーー 廣田さんは相当なスケコマシだと、分かった。 本当は、嫌だけど、 「…分かりましたよ、それでもいいんで…お願いします」 一瞬、僕は何をお願いしてるんだろうとは思った。 付き合うこと?してもらうこと? ……廣田さんのそばにいてもいいんだっていう、許可が欲しいんだ。 その為なら、このビールだって飲んじゃうぞ。 「おい歩、ペース考えろよ?」 「ペース何て分かりません」 お酒だって、恋愛だって。…急ぎ過ぎてるのかな…? 「…悪かったよ、俺も」     
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