お願いしてみた。【歩】

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廣田さんは僕の手を二、三度振って、振り落とす。 「好きなヤツにフラれたばっかで、なんかもう…どうでもよくなってたんだ。その子にしても、歩にしても。…けどこれからは、もうちょっとちゃんと考えるよ。相手のことをーー」 廣田さんがジョッキに口を付ける寸前で、僕は、 「やややっ、そんな考えなくていいですからとりあえず、して下さいよ」 「え?」 廣田さんが引いていたって僕は構わないんだ。 「だって、ちゃんと考えられたら廣田さんーー好きな人んとこいっちゃうに決まってるじゃないですかーー」 廣田さんが飲む前に、僕は手のジョッキを飲み干した。 「あああおいおいっ」 「…既成事実を、僕に、下さい…」 その後は、なんだか楽しかった記憶しかない。 僕は廣田さんにたくさんワガママを言って、その度廣田さんは多分答えてくれて。 僕がもう帰れないと言うと、僕の一人暮らしのおうちまで、タクシーで連れてってくれた。 ベッドに倒れ込む僕に、冷蔵庫からペットボトルの緑茶を持ってきてくれた。 スーツじゃ苦しいって言ったら、脱がせてくれて、 パジャマを着せてくれようとする廣田さんに…抱きついた。パンツだけの体で。 「…廣田さん…?…行かないで…」 「お前なぁ…」 僕は廣田さんの体を両足で挟み込んだ。     
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