引越し

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「一応言っておくが、俺にはあんたが見えてない。と言うか、このノートに勝手に字が現れるだけだ。後押し入れのふすまも勝手に開いたな。あんたが開けたのか?」 『押入れは開けたよ』  大輔は深呼吸をして少し気を落ち着かせた。 「分かった。とりあえずお互い自己紹介しよう。俺は柳 大輔、27歳、男性。職業はこの前会社を辞めたから無職だ。今日この部屋に引っ越してきた。」 『平宮 晶子、 17歳、 高2よ』 「ひらみや しょうこさんで良いのかな?」 『なるみや あきこよ』 「ところで今年は何年?」 『200X年』 「違う。今年は201X年。多分晶子ちゃんが死んでから10年になるね。」 『ちゃん呼ばわりはお断りよ』 「そうか」  大輔は実際に怪現象を経験するのは初めてだが、不思議と怖さを感じない。 「で救急車って?」 『夏休みに天文部の部活でペルセウス座流星群の観察をして帰りに』 「轢かれた?」 『よく分からないわ。直ぐ側で救急車のサイレンを聞いたのは覚えてる。車に乗ってるような感じだったから、救急車に載せられたと思ったのよ』  字が現れるのがどう言う原理か分からないけど、この晶子さんとやらと一応コミュニケーションが取れるようだと大輔は思った。しかし、大輔には幽霊と話したい事など無かった。     
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