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「う、うん…」
まだ痛む頭に遥香はうめき声をあげる。
「ハル!気づいたか!」
隣では怜が心配そうな顔をしてこちらを見下ろしていた。その手には遥香の手が握りしめられている。
「ぅ…ベット…?」
自分はいつの間に寝てしまったのだろうか。たしか教室で授業を受けていて、教科書を読むよう指名されたのまでは覚えている。けれど、そのあとからの記憶がない。
「大丈夫か?気持ち悪いとかないか?」
強いて言うならまだ頭が痛い。でも教室にいた頃よりはだいぶよくなっている気がする。これもいつの間にか寝ていたおかげかな?
「気持ち悪くは…ない」
「調子が悪いならちゃんと言ってくれよ!そうしたら気づけたのに!」
怜は今にも泣きそうな表情で訴える。
「私、なんで…?」
「ハル、風邪引いたんだろ?授業中にいきなりぶっ倒れて、俺がここまで運んできたんだ」
熱があって倒れるなんてことがあるんだ
風邪をひいてもこんなに無理をしたことはなかった。だから、調子が悪すぎて親以外をこんなにも心配させたのは始めてだ。
「レイが連れてきてくれたの?ありがとう」
遥香は自分の体を腕で支え、ベットの上に座る。横になった姿でお礼を言うのはいくら彼氏であっても失礼だろう。
「本当に心配したんだからな!」
怜に腕をグイッと引かれれば、そのまま広い腕の中に囚われる。あまりに勢いよく、そして力強く抱きしめられたため背中がきしむような感覚がした。
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