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銀砂を踏みしめてふたり、浜を歩く。
月の船、東天白んで万象影を戻す。
「……大尉は此処へ何を探しに来られたのですか?」
ルーシェンの何度目かの問いかけに繋いだ手の脈打つ温かさを感じながら、俺はこう答えた。
「君を迎えに」
遠くで微かにボースンホイッスルが聞こえる。
「また、戦地へ赴かれるのですね……」
「すぐに戻るさ。君の背中の蚯蚓腫れを確かめなくてはならないからね」
軽口にルーシェンは愛らしく笑う。
「ノワ、愛しています。生きて、きっと僕を迎えに来てください」
「あぁ、ルーシェン、俺も愛している。……では、」
「はい」
「……、行ってくるよ……」
Je t'aime de mon coeur.
Je vous suis attache.
振り返ると、月を眠らせてルーシェンが笑顔で佇んでいた。
Fin.
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