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プロローグ
長男のカーラ王子の部屋から聞こえてくる兄たちの話声を聞いて、ライラ姫は全身の血が引いていくのを感じていた。
まだ幼いその小さな体は全身がくまなく震え、今にも崩れ落ちそうになるのを何とか力を奮い立たせ、数歩後ずさると踵を返し真っすぐに自らの部屋に引き返した。
「スルブッ、スルブはいる?」
ただならぬライラの叫び声に、側近で、獣人狼族の従者スルブは何事かと首を傾げる。
「ライラ様、そんなに慌てて一体どうされたのです?」
ライラは肩で息をしながら、震えのおさまらない小さな手でスルブの手をぎゅっと握った。
「ス・・・スルブ、どうしようっ。
シャムスが殺されてしまうわっ!
シャムスをっ、お願いっ、シャムスをどうか守ってっ」
ライラの言葉を図りかねたスルブが首を傾げ、頭頂部についた大きな狼の耳がぴくぴくと動いた。そうしてライラの前に片膝をつくと、まだあどけなさの残る幼いプリンセスの視線に自らの視線をを合わせ、優しく声をかけた。
「ライラ様、どうか落ち着いてお話しください」
ライラは震える小さな手を、スルブの大きな手に包まれて徐々に落ち着きを取り戻すと、ごくりと自分でも驚くほどに大きく唾を飲み込んだ。
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