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貴方がくれた感情だと思うと愛しささえ感じる。苦しいのに、つらいのに。
考えれば考える程、行動が矛盾している気もする。自分がどうしたいのかハッキリとしているのに、いつ踏み出すべきかタイミングが掴めない。自分が何を考えているのか整理が出来なくなるなんて、情けない。
適当に想う相手じゃないと、本気だとこうも駄目になるものかと思い知らされる。
そうだ。俺だって、傷付くのは怖いんだ。
譲さんに拒絶されたくない。
嫌われたくない。
いや、傷付くのが怖いなんて今までは考えたこともなかった。何て臆病なんだろうか。弱いんだろうか。
あの時の貴方の表情は俺を拒絶するものだった。
――違う。違う、そうじゃない。嫌われてなんか、拒絶なんかされてない。少し怖がっていただけだ。またすぐ取り戻せる。大丈夫。……大丈夫だ。
渇きは一向に治まらない。
欲しくて欲しくてたまらない。触れたい、声が聞きたい、ほんの一目で良いから貴方を視界に収めたい、でもそれをしたら俺はきっと貴方を無理に抱いてしまいそうだ。でも会いたくてたまらない、渇いて渇いて、とても耐えられない。本当は今すぐ貴方に助けてほしい、きっと貴方にしかこの渇きは癒せないから。
渇きを誤魔化すように柚希を抱いた。
柚希はと言えば俺と出会う前から既にセックス漬けの毎日で、俺以外に何人もそういう相手がいる。自分は快楽主義者だと豪語していたが、本当にそうなんだろう。実にサッパリとしたものだ。女なら中々こうは行かない。便利な存在だった。それは、おそらく互いにとって。
「バイトは……まあ、飲食って言えば飲食かな。じゃあそろそろ行くよ」
「つれねぇー。まあそこがリョージの好きなとこなんだけどさ。そんじゃあ、いってらっしゃい」
軽くキスを交わし、俺は柚希の部屋を後にした。
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