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***  ケーキ屋は休日だからか、とても賑わっていた。 こうも人がいると、頼まれたケーキが残っているかどうかが気になってくる。  店に入ってショーケースの中を覗く。良かった。チーズケーキもミルフィーユもある。 ……それにしても混んでるな。イベントとか近かったかな?  ケーキ屋だからか、女の人ばかりで僕は居心地も悪いし、早いところ帰ろう。  買うものは決まっているから、サッと会計 の列に並んだ。  僕の前には十人以上並んでいる。女の子は二人以上集まると本当に賑やかに見えて、ますます僕は浮いてしまっている。 次々とショーケースから消えていくケーキに供給が追い付いていなさそうだ。並んでいる間に目当てのケーキは無くなるかもしれないけど、それは仕方ないと諦めてもらおう。  ここのケーキはあんまり甘いものを食べない僕でもどれも美味しくて、ハズレが無かったから、他のケーキでも顰蹙は買わないと思う。  ふと、僕の前に並んでいる女の子がきゃあきゃあと騒ぎ出した。ケーキを買いに並んでいるのに、その視線はレジに向けられている。  気付けば、ほとんどのお客さんがレジへと視線を向けながら、何かに見とれているような表情をしている。  き、気まずい……。  まるで僕までその何かに見とれている一員みたいで恥ずかしい。  周囲から身を隠すように自然と俯いていた僕は、ひたすら視線を落として順番が来るのを待っていた。  もうそろそろ、と言うところまで迫って、僕は漸く顔を持ち上げた。 「――え」  レジにいて笑顔を振り撒いていたのは、辻浦君だった。制服を着ているせいか、一瞬誰だか解らなかった。  見付けた途端、心臓が凍りついた。あの日の記憶が生々しく一気に蘇った。  ……辻浦君は僕に気付いているのだろうか?  今なら、まだ列から抜けられる。こんな大勢いる中で何かされるわけないと思うけど、そういう問題じゃなかった。  ――接触したくない。  ここでアルバイトしているなんて思わなかった。美波も知らないんじゃないだろうか? 知っていたら、僕に買いに行かせるとは思えない。  美波の好きな店で働くのは、解らないでもない。でもそれが理由だとはどうしても思えなかった。 「ねっ、本当にカッコイイねっ」 「でしょでしょー?! ここのケーキ高いけど美味しいしさ、店員さんイケメンだし最高だよねー!」
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