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生命の力を感じさせられる、体内の熱。
人の表層を覆う肌と肌とを合わせるより、もっと深く繋がった時にしか得られない、感じられない熱。
「入った、凄い、全部入った」
「ぅあ、あああっ」
一瞬一瞬全てを目に焼き付けていたいのに、あまりの感動に無意識に瞼を閉じていた。
譲さんと一つになれたのだという、余韻に浸る。
うっすらと瞼を開けると、眼下には痛みに苦悶した表情の譲さんがいる。普通なら、他の誰かなら、可哀想だと思うだろう。こんなに痛そうな顔をさせるくらいなら、解放してあげようと思うだろう。
だけど譲さんのこの表情が、確かに物語っている。俺のモノがこの人の中に在るのだと言うことを。
そう実感すると、全てがやはり愛おしかった。痛がっている、つらそうだ、でも俺を蹴飛ばしたり、殴ったりしない。いつ終わるとも分からない苦しみに耐えている。その姿すらも。
――可哀想、確かに可哀想だ。それでも離したくない、この人の中に自分の一部が在るこの現実を、手放せない。
放さない。
「譲さん、やっと一つになれた」
互いに汗塗れで、抱き締める譲さんの身体もやはり熱くて、譲さんの息遣いの荒さに被さるように、唇を何度も重ねた。
しっとりと汗ばんだ頬を撫でる。
つんとした上唇を食む。
ふっくらとした下唇を舐める。
「今、譲さんの中に入ってる俺の形、忘れないで」
貴方の奥底に烙印を押せたらいいのに。
俺以外、誰の侵入も許さないという、烙印を。
ゆるゆると馴染ませるだけに留めていた動きに僅かに勢いをつけていく。まるで譲さんの方が、俺を放したくないとでも言うように、そこに纏わり付く圧は、その力を上げていく。
打ち付けるたびに譲さんから声が上がる。まだ痛覚に支配された、くぐもった声。
「くる、しい……」
やっと搾り出したような訴え。譲さんは痛みに耐えるように、ぎゅっと目を瞑っていた。
「苦しい? まだ痛い?」
「痛い、痛……」
ああ。俺はこんなに気持ちいいのに。
譲さんはまだ解放出来ていない。味わえていない。それはあまりにも不公平だ。
譲さんを少しでも安心させたくて、壊れ物に触れるようにそっと髪を梳いた。
「大丈夫だから、譲さん。一緒に気持ち良くなろう」
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