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「客用布団は一階にあるのよ。二階まで上げてもらわなきゃいけないけど」 「解りました。俺、こう見えて力あるんで、美波とお母さん二人なら一緒に担げますよ」 「あらもう、ヤダ! じゃあ、こっちね」  二人は……と言うより母さんは異様にテンション高く辻浦君と一階に降りて行った。 美波だけが部屋に残って、僕に振り返った。 「何か、ごめんねお兄。お母さん強引だよね」 「……美波のせいじゃないから」 「孝文が、お母さんとも仲良くなれて嬉しいしお兄とも、って話し出したらあんな感じに母さん纏めちゃってさ。お兄、あんまり親しくないような人を部屋に呼ぶのとか嫌かなって思ったんだけど……。でもね! 孝文、本当に良い男なんだよ。あたしが言うと惚気てるみたいだけどさ、ふふっ」  自分の事みたいに辻浦君を誇らしげに言う美波。  僕に出来ることは何だろう? 少なくとも美波には最高の彼氏のようだ。  辻浦君が酷いのは僕にだけなのか? あれが本性ではなくて?  それなら僕は、嫌われているんだろうか、辻浦君に。 「……美波、辻浦君て一人暮らしじゃないんだ?」 「え? 普通に実家暮らしだよ。でもまだ孝文の家に行ったことはないんだぁ……。今度お願いしてみなきゃ」 「そう……」  目を輝かせている美波に、僕はそれ以上なにも言えなかった。  母さんと辻浦君の二人が二階に上がる音が聞こえてきた。     
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