Reset ②

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「そうなんだ、ありがとう。――あ。そうだ。あのね、美波の好きなケーキの店がこの先の、」 ――美波。美波、なんで、美波?  今俺は、貴方と話がしたいって言ったんだ。  美波のことなんてどうでもいい。  なんでそんなに、どうでも良さそうにしているんだ……    譲さんの言葉を聞いた瞬間、色んな思いが頭の中を駆け巡って、怒りでカッと頭に血が上ったのを感じた。   「美波のことはいいんですよ!!」      気がつけば、ざわついた店内が、静まり返っていた。  目の前の譲さんも固まっている。  ハッとした様子で譲さんが俺に謝ってきたけど、それだってどうして謝っているのか解らないんじゃないのか?  とりあえず謝って、この場を鎮めて、事なきを得ようとしているんじゃないのか?  俺との時間を、もうこれ以上延ばさないように――  そんなことは、許さない。 「譲さん、外、出ませんか?」 「え? いや僕は」 「行きましょう」  強引過ぎるやり方だって、冷静になっている俺の一部が言っている。けど、そんな一部の理性なんかじゃこの気持ちは抑え切れなかった。  強い力で腕を引っ張られて混乱している譲さんは、俺の為すがままにされている。 「えっ、ま、待って辻浦君! これから頼んだメニューが」 「夕飯なら俺が奢りますよ。俺が誘ったんだし」  レジに向かい、ウェイトレスに「あのテーブルの会計、まだ来てない分もお願い」と言うと、困った様子で裏のキッチンへと視線を巡らせていた。   「早く、急いでるんだ」 「あ、す、すみません。せ、1570円です……」 「じゃあ二千円で。お釣りはいらないから」 「え……っ」  うろたえているのはウェイトレスだけじゃなく譲さんもだった。その腕をさっきより幾分力を抑えて引いて、俺たちは店外に出た。
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