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Reset ③
***
譲さんが居なくなった後の部屋は普段と何も変わらない自分の部屋なのに、酷く閑散として空虚なものに思えた。
「譲さん」
自分の声が貴方の名前を紡ぎ出す度、この身体は小さく震えてしまう。
自分の声帯を震わせているのが貴方の名前だと感じると頬が緩む。
きっと譲さんは触れられることに慣れていなかったのだろう。俺が譲さんの肌に触れた時も微かに震えていた。緊張しているんだと言う事がすぐに分かって、その不慣れな様子が可愛かった。
そう。
興奮していた。
酷いことを言っていると、譲さんを困らせていると解らないわけじゃなかった。
けれど、本能のように湧き上がる衝動に抗う事は出来なかった。
貴方を細長い道の途切れる場所まで、追い掛けて追い掛けて追い掛けて追い掛けてそして、
道の終わりにある崖の直前で貴方に追い付いて
捕まえたいと思った。
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