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Another Story
しとしとと雨が降る。
放課後、俺はここに入学して初めて図書室へ行ってみる。
いつもこの時間なら野球部の喧しい声が聞こえるが、今日は生憎の雨。未だ降り続く雨音だけが校内を満たす。
図書室に向かう廊下には雨音と俺の足音だけが虚しく響く。
以前にも増して今日は何か物寂しい気もする。部活の喧騒とは関係無くなってしまった俺。
今は踏ん切りが付いたものの、こういう日はあの日々を思い出して寂しくなるもんだ。
キィッ
図書室のドアを開ける。
先客が一瞬ドアの方へ目をやり、また本へ目を戻す。
「お前は、同じクラスの……」
俺は先客に声をかける。
彼女は同じクラスの女子。頭も良いし、博識。……頭良いも博識も大体意味一緒か。
まぁ、いつもテストは最高得点。全国模試も毎回上位だって噂だ。
それに……艶のある肩口まで伸ばした黒い髪。柔らかそうな白い肌。目鼻立ちもしっかりしていて、普通に美人。俺とは真逆の人間かもな。
「お前、ここで何してんの?」
俺は少し恥ずかしくなりながらも彼女に声をかける。少しぶっきらぼうだったかな?
「本、読んでるの。ここで読むのが好きなの」
彼女は本から目を話さずお返しとばかりにぶっきらぼうに返す。
「そっか……」
俺は返事をしてくれた事が嬉しかったけど、バレないように小さく呟き、演技出来なくなる前にすぐその場を離れた。
てか、あの子声も綺麗なのか……
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