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「お会計、しましょうか?」
「ああ、そうだね頼むよ。……あ。ちなみに蓮見君、最近のオススメとかあるかな?」
あるよ。たくさんある。
素晴らしい本。感銘を受けた本、思い切り泣いた本、笑った本、自分を振り返った本、今より幼い頃を懐かしんだ本、まだ見ぬ未来を想像させる本。
自分が感動した素晴らしいと思える本を見つける度に神崎さんに読んでほしいって、読んで、欲しくて。手帳には良かったと思えた本の詳細をメモしていた。
だって、神崎さんと僕の繋がりは本にしかないから。
「……ええっと、そうですね。店長が今ちょうどあちらに毎月恒例のコーナー出しているんですよ。店長の選ぶ本は、僕にとって本当にどれもハズレ無しですから……、僕もよく参考にしているんです。良かったら見てみて下さい」
自分勝手な感情から起きた波で仕事に支障をきたすなんて最低だ。最低なのに――
今、神崎さんに本の紹介が出来る自信がない。
「……そうなんだ。今までずっと蓮見君に頼りっぱなしだったから見たことなかったな。今度またじっくり見に来るよ。ありがとう」
「はい、是非。ではレジにどうぞ」
自然に対応出来ているだろうか。変に思われていないだろうか。普段通りに声を出せているだろうか。
ずっと会いたかったのに、今はただただ早く時間が過ぎて行ってほしくて仕方がない。
「ほら嘉乃、お兄ちゃんにこのお金を渡して、本と交換してもらおうな」
「よしのねぇ、この前お母さんとお買い物ごっこしたから大丈夫だよっ。お兄ちゃんはパパのお友達? 仲良し?」
「蓮見君悪いね、好奇心旺盛な子で」
「いいえ。可愛くて羨ましいな」
僕は今ちゃんと笑えているだろうか?
next sunnyday?
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