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「児童書もそうなんですけど、小さい子に読み聞かせたり、小さい子自身が読めるような本って、良い意味で穢れがないというか、真っすぐなんですよね。だから疲れたときなんかすうっと心に染み込んでくる。
僕も、ここ入るまではほとんど漫画ばかり読んでいたんですけど、大人の方が沢山絵本買われていくんですよ。気になって、僕も一冊読んでみたらもう、号泣」
「ははは。それはちょっと、見てみたい光景だな」
「泣いてる光景ですか? 酷い顔して泣きますよ、僕」
何冊か薦めると、パラパラと中を見て真剣に吟味する神崎さん。
その姿に、僕は心がくすぐったくなる。緊張するのに、ずっとこの感覚を味わっていたい不思議な気分。
「じゃあ、これとこれで。蓮見君と知り合ってから自宅にとうとう本棚が出来たよ」
「それは何よりです。また、お待ちしてますね」
「ああ。また」
神崎さんはこんな大雨の中本を脇に抱えて、濃紺の大きな傘をさして帰っていった。
また次も、雨が降る日に来てくれるだろうか。
そしていつかは晴れの日に、彼に会えたらいいのに。
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